ジャンルの壁を超えるクリエイター「泉屋宏樹」Hiroki Izumiya

ジャンルの壁を超えるクリエイター「泉屋宏樹」

泉屋宏樹氏は様々な分野のアート活動を展開しているアートディレクター・デザイナー、そして版画家である。

彼は、一つの分野に限らず、様々な経験を持つ実力者だ。

東京デザイン事務所での企画営業の経験から、カナダのトロントで2年間アートディレクターとしての活動まで、様々な経験をしている。

又、帰国後にはデザイン学校の講師としての経験を積み重ね、2008年、自身のデザイン事務所「iD.(アイディー)」を設立する。

現在はデザインとアート・広告、ブックデザイン・展覧会の企画を中心としたグラフィック全般のアートディレクションを展開している。

大事なのは発信力

 

そんな彼が芸術や作品において最も大事に思っているのは発信力であるという。

彼は普段、多くの展示会やギャラリーを見回っているが、「展示会と言えば、見せ方が大事ですよね。人々に足を運んでもらわないといけない」と言い、ギャラリーや展示会に参加する際にはアートディレクターとしての目線になって「必ず客観的に見るように心かけている」「自分側ではなく、全体としてみんなが盛り上がるためにはどのようにすれば効果的なのか」を考えながら作品を観ていると語った。

それは「作品は世の中に広めないと意味がない」と思う自身の考え方の一つであると言い、「いくら良い作品であって、時間をかけて製作した作品であっても、それを人々に見ていただかないと作品としての評価ができないですね」と作品の発信力が大事である理由について説明してくれた。

作品の見せ方は‘価値’に繋がる

そんな彼は、色んなアーティストが自己満足で終わってしまうことが多く、「一緒に何かしてみませんか。こんなところもありますが、展示してみてもいいですよね」とアーティストさんに声掛けすることも多いという。「余計なお世話かも知れませんが、自分はやっぱりアートが好きなので、だったらアートに興味のない人にどうすればもっと見てもらえるかということを工夫したいですね。デザインの力で」とアーティストとしての自信の信念をみせてくれた。

又、彼は東日本大震災を経験した2011年の春、瀬戸内海の小さな島の町を紹介する一冊の帳面からはじまったプロジェクト「わたしのマチオモイ帖」で経験した“見せ方の重要性”について語り続けた。

彼がマチオモイ帖の活動に参加していた頃、テレビニュースのインタビューに出演する機会があり、テレビという媒体の力にすごく驚いたという。「いくら良い意図で企画されたプロジェクトでも、どれほど色んなクリエイターが集まり、地元に対する思いを思い込めて、作品を作って展示しても、まわりの一部の方達からは(うちの親もそうだけど)何の仕事に繋がるねんと言われて」、「自分が本を製作して、ここで展示会やってますよと言っても、なかなか忙しくていけない。いかない。入場無料でも…」と語り、「本を製作するだけではなく、その結果物を皆が興味を持っている媒体のところまで持っていってからこそやっと人々は作品に興味を持ってくれる」アートの価値は見せ方も大事ということ。また

「お金になるとか、そのようなことではなくても、“作家の想いや作品自体の価値”を伝えることはとても大事」と言い、「発信力の優れた媒体を通じて、人々から注目されると、興味のなかった人々も段々と尋ねていく傾向がある為、そのようなことをうまく活用することができれば心血を注いだ作品を、より多くの人々に伝えることができますよね」と、アーティストの努力を無駄にしたくない彼の気持ちが伝わり、作品やアーティストに対する彼の愛着と配慮が感じられた。

ものづくりが続けられる平和な社会

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泉屋宏樹氏は「物が作れるのはすごく贅沢だ」と語る。

「クリエイターって、時間的にも金銭的にも余裕がなければ仕事を維持していけないと思う。物を作り続けられるというのは、恐らく気持ちにも余裕があることなので、“平和の象徴”でもある」と自信が思う理想の社会について説明してくれた。

彼がそう思うようになったきっかけのひとつに“みらいのたいよう計画”というプロジェクトがある。2014年、武蔵野美術大学の教授が立ち上げた“みらいのたいよう計画”というプロジェクトの一環として、彼が本の装丁に関わった小説家、泉鏡花の絵本「絵本化鳥(けちょう)」が東京都東大和市第五中学校の教材として選ばれたことでプロジェクトに関わることになったという。東大和市第五中学校の1,2,3年生全員の授業に使われ、「本のデザイナーとして学生たちと出会うことができた」と語る彼は、彼がデザインした本をみた学生たちから`私も本を作りたい’、`こういう仕事ができるひとになりたい’と言われ、「子どもたちの人生を変えるくらいのすごいことに関わってしまったなという気持ちになりました」と言い、「自分が作ったものが今の子どもたちに、あるいは次の世代の子どもたちに影響を与え、それが腐らず、何世代後にも続けられる物作りができればいいなと思いました。」と述べた。

物作りが続けられる平和な社会を望むという彼のアーティスト精神から、アートに限らず、アートの力を用いた何かで、贅沢な生活ができる社会はきっと作れる気がした。

世界の色んな人がもっと交流し、お互い意見を話し合い、お互いの作品を評価できる平和な世界が来ることを心から願う。又、彼の望む社会が実現できるまで応援し続けたくなる時間だった。

作品の詳細はLOB45 GALLERYでご確認ください。

profile

1974年大阪生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒。

東京のデザイン事務所にて企画営業職を担当後、

カナダ・トロントで2年間活動。

帰国後、デザイン学校講師を経て独立。

近年では泉鏡花作、中川学絵による繪草子『龍潭譚』、泉鏡花文学賞制定40周年記念プロジェクトとして制作された『絵本化鳥』の装幀を担当。

また第47回造本装幀コンクールで『絵本化鳥』が読書推進運動協議会賞、Design For Asia Award2013(DFAA)で繪草子『龍潭譚』が銅賞、『絵本化鳥』がメリット賞を受賞。

Born in 1974, and a graduate of the Design Section. Art Department in Osaka University of Arts, Hiroki Izumiya established iD.in 2008. He is a graphic designer for the advertisement industry as well as a printmaker, holding many art exhibitions.